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分卷阅读191 (第3/3页)
なものだったのでな」「ほう。君にあの調べが理解出来たとでも?」挑発的な台詞は地なのか、それともハッタリか。私は目を細め、持っていた扇子で手を叩いた。「人を狂わすというその噂、確かに納得せざる得なかった」純粋に賛辞を込めて言うが、気難しい彼はスッと冷めた目つきで私を見やる。興ざめしたと言わんばかりの表情で私を見下ろす。「やはり、到底出来ていない。所詮はその程度というものか」言うや否や、彼は重たい琴を物ともせず踵を返し、これ以上はないと暗に告げている。「心労が募った心で私の調べが理解できると?」「なるほど。それは失礼な事を言った。では、明日は純粋にその音を楽しむ為にここに来よう」「ふん。口先だけで出来るとは到底思えないがな」どうやら気休めに聴いていたのが気に障ったらしい。音律の道を極めた者にとって、何かを紛らわせるために聴かれたのであっては無粋にしかならないのだろう。失礼を詫びるように彼が立ち去るまでその場でじっとしていれば、彼は一切こちらに振り返る事もなく立ち去って行った。次の夜はいるかどうかも分からない妖琴師の琴の音を聴く為だけに桜の巨木の元へ訪れた。約束も交わしていなければ、気難しい彼なので来るどうかもわからない。期待半分に訪れた場所に、かくして妖琴師はいた。前の夜と同じ位置に座し、私も昨日と同じ位置に佇む。息を殺して、世界が妖琴師の奏でる音だけになったかのような錯覚に囚われ、目も眩むような時間に浸る。その時だけは何もかもを忘れて、じっと彼の音だけに身を任せた。そうして余韻に浸っていればいつの間にか妖琴師の姿はなく、私は誰もいない桜の木に向かって「お見事」と笑みを向ける。そんな夜が連日続き、最近はあれほど感じていた疲れも感じなくなっていた。相変わらず蔓延る悪鬼が絶える事はないが、夜にあの音を聴くだけでその日に
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